電気事業・発電事業

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電気事業・発電事業業界は、発電を行う企業、送配電(T&D)設備を建設、所有および運用する企業、ならびに電気を販売する企業で構成されている。電気事業者は、一般に石炭、天然ガス、原子力、水力、太陽光、風力およびその他の再生可能エネルギーならびに化石燃料を含むさまざまなエネルギー源から発電している。この業界には、規制されたビジネス構造と、規制されていないビジネス構造の両方で事業を営む企業が含まれている。規制の対象となる電気事業者は、規制当局による、価格決定メカニズムや当該事業の許容される株主資本利益率に対する包括的な監督を含む、多種多様な規制を受け入れことと引き換えに、独占事業者として営業する免許を得ている。規制を受けない企業、すなわち市場型電気事業者は、規制の対象となっている電気事業者やその他の最終需要者が参加する卸売市場に販売するために発電を行うIPP事業者であることが多い。さらに、この業界は規制を受ける電力市場と規制が撤廃された電力市場に分類されており、これは、規制を受ける電気事業のバリューチェーンの上流のどこまで及ぶかという問題を抱えている。規制対象市場では、一般的に、発電から当該電力小売に及ぶすべての設備を所有し運営する、垂直統合型の電気事業モデルとなっている。規制のない市場では、一般に、発電事業と配電事業は分離されており、卸売電力市場での競争を促すように設計されている。全体的に、この業界の企業は、人命の保護と環境とのバランスを取りながら、信頼性が高く、利用しやすく、低コストの電力を提供するという相反するような使命が課されている。

関連問題 (九 の 二十六)

いくつかの問題がグレーアウト表示されている理由 SASB基準は産業内の異なる持続可能性リスクと機会により産業ごとに異なります。灰色で示されている問題は基準設定プロセスの際、企業価値に影響を与える可能性が最も高いものとして認識されなかったため、基準には含まれていません。時とともにSASB基準理事会が市場のフィードバックを受け取るにつれ、いくつかの問題が基準に追加され、あるいは 基準から削除されることがあります。各会社は、持続可能性問題がその会社の企業価値を作り出す能力に影響するかどうかにつき、自ら決定します。この基準は産業内の典型的な会社を対象として設計されていますが、それぞれの会社は、各社独自のビジネスモデルに基づき異なる持続可能性問題について報告することを選択できます。

開示トピック

一般問題カテゴリと開示トピックの関係はどのようなものですか? 一般問題カテゴリは、各SASB基準に出てくる開示トピックの産業非依存性版です。開示トピックは、一般問題カテゴリの産業特異的な影響を表しています。産業特異的開示トピックは、各SASB基準が産業に合ったものであるようにし、一方一般問題カテゴリは産業全体に渡る比較ができるようにします。例えば、健康と栄養はノンアルコール飲料産業における開示トピックで、顧客福祉という一般的問題に対する産業特異的対策を表しています。しかし、顧客福祉という問題は、バイオテクノロジー・医薬品産業では、偽薬開示トピックとして表されます。
一般問題カテゴリ
(産業非依存性)

開示トピック (産業特異的) に対し: 電気事業・発電事業

GHG排出
  • 温室効果ガス排出量およびエネルギー資源の計画

    発電事業は世界最大の温室効果ガス(GHG)排出源である。これらの排出物(主に、二酸化炭素、メタンおよび一酸化二窒素)の大部分が、化石燃料の燃焼の副産物である。送電や配電(T&D)部門は、無視できる程度にわずかな量ではあるが、その排出量について責任を負う。環境規制がますます厳しくなりつつあることから、電気事業者は、GHG排出量を緩和するために多額の事業費および資本支出に直面する可能性がある。これらのコストの多くが電気事業の顧客に転嫁される可能性があるが、特に規制が撤廃された市場では、一部の発電事業者で、これらのコストを回収できない可能性がある。規制が定める排出量要件を充足できるようなエネルギーミックスを確保するためのインフラ投資を慎重に計画することにより、そして、業界をリードする技術とプロセスの導入により、企業は、発電事業からのGHG排出量を削減することができる。コスト効率の良いGHG排出量削減に積極的に取り組むことは、企業に競争上の優位性をもたらすとともに、予期しない規制遵守コストを低減する可能性がある。一方で、資本支出に対する必要性を適切に推定せず、コストを許容しない、あるいはGHG排出量削減におけるその他の困難があると、資産評価損、カーボンクレジット取得コスト、または事業費および資本支出の予期しない増加という形で、将来の利益への重大な負の影響が生じる可能性がある。2015年末に開催された第21回国際連合締約国会議で合意された国際排出量削減協定に例示されるように、この問題に対する規制の重要性は、恐らく今後数十年の間に拡大するであろう。
大気質
  • 大気質

    発電事業活動における燃料燃焼は、有害大気汚染物質(HAP)、規準大気汚染物質(CAP)および揮発性有機化合物(VOC)を発生させる。HAP、CAPおよびVOCがヒトの健康と環境に及ぼす影響は、温室効果ガス(GHG)のグローバルな影響と比較して、より局所的ではあるとは言え、重大である。最も一般的で影響度の高いものは、窒素酸化物(一酸化二窒素を除く)、硫黄酸化物、粒子状物質(PM)、鉛および水銀である。これらの局所的な大気汚染物質の排出は、厳しい規制の対象となることがしばしばあり、発電者にとって重大なリスクをもたらす。大規模な地域社会の近辺で事業を展開する企業にとって、規制リスクおよび法的リスクはより大きい。企業の発電エネルギーミックスは、大気質に関わる当該企業の相対リスクの最良の指標である。事業活動からの大気への有害な排出の結果として、莫大な出費、規制遵守コストの増大、およびクラス最高の制御技術を導入するための新たな資本支出が生じる可能性がある。そのような支出が施設を存続させる上で法外に高くなる可能性があるケースもある。企業は、排出量を削減するための社内の措置によるほか、規制当局と連携して、リスクの優先順位を設定し、リスクを短期および長期の資本計画に組み込むことにより、大気質に係る懸念事項を管理することができる。
水及び下水管理
  • 水資源管理

    発電は、取水量に関して、最も水集約型の産業の一つである。サーマル発電プラント(通常は石炭、原子力および天然ガス)は、冷却用に、大量の水に依存している。業界は水に関する供給および規制上のリスクの増大に直面しており、技術への資本投資を要する可能性があり、場合によっては資産が立ち往生状態になる可能性もある。多くの地域で水の供給が逼迫し、今後10年間において発電、農業および地域社会での水利用に係る競合が生じる中で、地域固有の水の制約により、発電所がフル稼働できなくなる可能性、または全発電所での稼働ができなくなる可能性が高まっている。水の利用可能性は、多くの発電資産の将来価値を算定するにあたって、また、新しい発電ソースに関する既存の提案を評価するためにも、考慮すべき重要な要素である。特にベースラインの水ストレスが高い地域では、より頻繁で激烈な干ばつが生じるなどの気候変動による消費量の増加や供給賞の減少といった要因によって水不足が深刻化し、規制当局により、企業が必要な水量を取水する能力を制限される可能性がある。さらに、企業は、このような大量の取水によって生じる可能性のある重大な生物多様性への影響に対する規制の拡大に対処しなければならない。リスクを軽減するために、企業は、既存の発電所のより効率的な水利用システムに投資し、新たな発電所を建設するにあたっては、長期的な水の利用可能性を評価するとともに、水に関連する生物多様性リスクも評価することに戦略的重点を置くことができる。
廃棄物及び危険物管理
  • 石炭灰管理

    発電者は、自らの事業活動によって生じる有害な副産物を安全に廃棄処分しなければならない。石炭火力発電は、その副産物である石炭灰のため、有害廃棄物の主要な発生源である。石炭灰は、この業界の発電部門における企業価値に重大な影響を及ぼす可能性がある。この問題は、企業が石炭を用いて発電する、その程度によって、各企業に対し異なる影響を及ぼす。石炭灰は世界最大級の産業廃棄物の流れの一つである。石炭灰は、特に地下水に浸出したときにがんやその他の重篤な疾患に関連している重金属汚染物質を含んでいる。フライアッシュコンクリートや壁材の製造など、石炭灰にはリサイクルまたは再使用の有益な用途があり、電気事業者に収益機会をもたらす。石炭灰の安全な取扱い、人命や環境に対する危害を最小にする石炭灰貯留槽の配置、石炭灰のしっかりとした監視と閉じ込め、および石炭灰の有益な利用のための販売は、規制遵守コストのほか、違反に係る処罰を削減するための重要な戦略である。石炭灰が周辺環境に浸出すると、多額の訴訟費用や是正費用が発生する可能性がある。
アクセスとアフォーダビリティ
  • 低廉なエネルギー

    規制分野における電気事業者の事実上の目的は、信頼性があり、手頃で、かつ、サステナブルな電力を提供することである。この業界の企業は、顧客および規制当局との良好な関係を維持し、最終的には株主に適切なリターンをもたらすために、潜在的に競合するこれらの優先事項をマネジメントすることが求められている。エネルギーのアフォーダビリティ(手頃さ)は、他の主要な目的としばしば対立することから、企業にとってバランスを取ることが特に難しい。電力料金は、低所得顧客にとってますます払い難くなっていると広く認識されている(アフォーダビリティは、光熱費の正味コストと、根本的な顧客の経済力の両方によって決まる)。電力料金が手頃な価格であることを確保することは、規制当局や顧客との信頼関係(無形の資産価値)の構築に取り組む電気事業者にとって極めて重要である。規制関係の質は、電気事業者の主要なバリュードライバーであり、投資アナリストによってより綿密に分析される事項の1つである。規制当局が料金申請や料金体系の変更、コスト回収および許容リターンを許諾するような意思をもっていることは、財務パフォーマンスと投資リスクの主たる決定要因である。アフォーダビリティを効果的に管理することにより、電気事業者は、より多くの資本を投資し、料金体系を有利に改定し、許容される利益を増やすことができるかもしれない。一方で、アフォーダビリティを効果的に管理しない電気事業者は、分散型エネルギー資源の導入やその他の代替エネルギー源(例えば、工業顧客における熱電気複合利用)の追求によって系統電力からの顧客離脱(または系統電力に対する信頼の低下)にますます晒されている。アフォーダビリティを管理するには、綿密に検討された長期的な見通しと戦略をもって効率的な事業を営むことに加え、料金体系や、場合によっては請求支援プログラムに関して、規制当局および公共政策立案者と緊密に連携することが必要である。アフォーダビリティが財務面に与える影響の正確な特性は主に電気事業者のビジネスモデルと料金体系によって決定されるが、アフォーダビリティは、顧客基盤の維持(および成長)、無形資産価値の構築、投資の機会と利益の機会の創出、および究極的な株主利益の実現の観点から、電力会社が管理する重要な事業課題である。
従業員の健康と安全
  • 労働者の労働安全衛生

    この業界の企業の従業員は、送配電(T&D)線の建設及び保守におけるほか、さまざまな発電手段に伴う数々のハザードに直面している。これらの従業員の多くが、高所で長時間にわたって作業し、重機を操作し、感電死のリスクに直面している。この業界は安全性の改善においてかなりの進歩を遂げたが、重要なリスクと機会にさらなる改善の余地がある。現代の生活や経済に必要不可欠であり、そして社会的に認められた独占企業であることから、業界の性質上、業界内の企業の行動は、一般市民や規制当局の厳しい監視を受けることになる。企業は、自社の労働者のために適切な労働条件や強力な業務生産性を確保し、規制当局の観点からの前向きな見解を維持し、規制による罰則の潜在リスクを管理するために、安全文化を維持する必要がある。
ビジネスモデル回復力
  • 需要家のエネルギー効率と需要

    エネルギー効率は、同じ最終使用エネルギーサービスを提供するために必要な電力が低減されることから、温室効果ガス(GHG)排出量を削減するための低ライフサイクルコスト手段といえる。電気事業者は、その顧客における省エネルギー促進のためのさまざまな活動に参加することができる。具体的な戦略としては、エネルギー効率が高い機器に対するリベートの提供、顧客住宅の耐気候構造化、顧客への省エネルギー手法に関する教育、ピーク需要の時間帯の電気使用を抑制する(「デマンドレスポンス」)ための顧客へのインセンティブの提供、顧客がエネルギー使用量を追跡できるスマートメーターなどの技術への投資など、数多くの戦略が挙げられる。消費者の費用を節約するこれらの取組みは、ピーク需要を低減できるため、電気事業者の運転コストが減少する可能性もある。さらに、企業の地域における公益事業委員会の意見によっては、新しい建設を検討する前に、エネルギー効率化を規制上の優先事項にできる可能性がある。電気事業者がGHG緩和に向かうこの傾向から利益を得るか失うかは、当該電気事業を取り巻く規制環境に基づく部分が大きい。従来の料金体系では、一般的に、電気事業者にエネルギー効率化のためのインセンティブを与えておらず、さらには、顧客の需要減少によって電気事業者が経済的に悪影響を受ける可能性もある。このため、電気事業者と規制当局および顧客において、代替的な料金設定を追求する傾向が強まっているといえる。このような代替の料金設計は、しばしば、電気事業の収益を顧客の消費から分離するとともに、最終用途効率と需要低減のための明示的なインセンティブが盛り込まれることもある。全体として、需要変動によるダウンサイドリスク軽減に対し戦略的な計画を有する企業は、必要とされる効率性に対する投資から適切かつタイムリーなリターンを得ている。さらに、効率化の取組みを通じたコスト削減は、電気事業がよりしっかりとしたリスク調整後利益を長期にわたって得るようになるための助けとなる。
クリティカルインシデントリスク管理
  • 原子力安全と危機管理

    原子力事故は極めて稀ではあるが、実際に発生した場合には、ヒトの健康と環境に重大な影響を及ぼす恐れがある、深刻な事故となる可能性がある。多くの地域の原子力発電所の所有者は公衆の安全に関わる重大な災害を発生させることなく数十年間運転してきたが、稀であるが大規模な災害が世界のどこかで発生した場合、原子力業界全体に重大な影響を及ぼす可能性がある。原子力発電所を所有し運営する企業は、事故が発生した場合、運転ライセンス(全部または原子力発電所の運営に係る部分)の喪失のみならず、その他多数の財務上の影響に直面する可能性がある(ただし、企業は保険に加入しており、特定の賠償責任に対する法的保護を有することもある)。安全規制違反は、原子力事業者にとって極めて高コストになる可能性があり、極端な状況では、当該違反により、プラントの運転の継続が不経済になる可能性がある。継続的な安全遵守とテールリスク災害の顕在化の両方に起因する重大な財務影響を踏まえて、原子力発電所を所有し運転する企業は、自社の施設の安全遵守、ベストプラクティスおよび性能向上において注意深くなる必要がある。さらに、自社の職員を対象とする緊急事態への強固な備えに関するトレーニングと強力な安全文化を維持する必要もある。これらの対策は、事故が発生する確率を低減し、企業がそのような災害を効果的に検出し、これに対応することを実現する。
システミックリスク管理
  • 系統電力のレジリエンス

    電気は、医療から金融まで、現代生活のほぼすべての要素の機能を継続させるために不可欠であり、継続的なサービスに対する社会的依存につながっている。電力インフラが大規模に混乱した場合を考慮すれば、潜在的な社会コストはとても高い。混乱は、異常気象、自然災害およびサイバー攻撃によって引き起こされる可能性がある。気候変動に関連する異常気象の頻度と深刻度は上昇し続けており、それゆえ、電気事業者のすべての部門(特に主要な送配電(T&D)事業活動)が、それらのインフラに対する物理的脅威の増大に直面するであろう。これにより、頻繁または重大なサービス中断、停電、および損傷したまたは欠陥のある機器のアップグレードや修理の必要性が生じる可能性がある。これらはすべて、規制当局および顧客の多大なコストとなる可能性があり、また規制当局および顧客の見方を損なう可能性がある。スマートグリッド技術の利用拡大には、異常気象に対するグリッドのレジリエンス強化を含む、いくつかの利点がある。ただし、この技術は、ハッカーがインフラシステムに侵入しやすくなるため、グリッドをサイバー攻撃に対してより脆弱にする可能性がある。企業は、異常気象およびサイバー攻撃による影響の確率と規模を最小化する戦略を実施する必要がある。企業は、自社のインフラの信頼性、レジリエンスおよび品質を改善するために説得力ある料金事例を積極的に提示することによって、増大し続ける外部との競争に直面しながらも、競争力を維持することができる。

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